愛され秘書の結婚事情
悠臣が精算を済ませる前に、待ち構えていた路子が玄関から駆け出して来た。
「七緒……!」
庭に出て娘に向かって片手を振ってみせた路子だったが、別人のように変身した七緒を見て動きを止めた。
さらにその娘の後ろから、田舎では珍しいほどに背の高いモデルのような男が現れて、ポカンと口を開けて立ち尽くす。
「お母さん……!」
門から走って路子の前に立った七緒は、「ただいま」とはにかんだ笑顔を見せた。
その後ろからゆっくりと、悠臣が母娘(おやこ)の傍らまでやって来た。
「こちら、桐矢悠臣さん。電話で話したでしょう?」
「ああ、ええ……」
呆然とする母に先に恋人を紹介し、七緒は悠臣に向かって「悠臣さん、母です」と路子を紹介した。
悠臣はニッコリと愛想の良い笑みを見せ、「初めまして。桐矢悠臣です」と路子に向かって頭を下げた。
スーツ姿の男を見慣れた路子も、悠臣の洗練された雰囲気には圧倒されて、「ど、どうも。七緒の母でございます……」と赤い顔で挨拶した。