愛され秘書の結婚事情

「あのね、佐々田さん。僕の前の奥さんのことは知ってる?」

「……噂程度の知識なら」

「どんな噂?」

「ええと……。確か学生時代はミスコンに出場するくらいの美人で、学校の人気者で成績優秀で。母親は有名なピアニストで、彼女自身も楽器演奏が得意で。父親は大手バンクの取締役で、完璧な女性だったと……」

「うん。その情報は全部正しいね」

 悠臣は頷いて、「でもね」と言った。
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