悪役令嬢になりきれませんの。
舞踏会は商品の紹介場でもある。令嬢







飾りに飾られた私の部屋に来た母は私を見て満足気に微笑んでいる。今日の舞踏会は両親も参加するので一緒に行くことになっている。







「お母様の可愛いシャルネラちゃん。今日は一段と素敵よ。それに、こんな素敵なドレスと靴をありがとう。」





そう言ってマーメイドラインの私と色違いの赤を纏いヒールではなく、私の幼児のような絵でリリー・スラベルが完璧に再現したウェッジヒールを履いたお母様が飾りを崩さないようにそっと私を抱きしめる。





「お母様も一段と素敵ですわ」





「うふふ。準備はすんでいて?」






微笑みメイドにそう聞くお母様。メイド達は最終チェックと私を見回し、そして最後にリップをつける。






「お嬢様が考えた色です。」






そう言って真っ赤でもなく肌に近い色、でもなくどちらかと言えば淡いピンクの口紅を私に着けてくれ。頷く。






「奥様。準備はすみました。……お嬢様、どうぞ思う存分お披露目してきてくださいませ。舞踏会の主役はお嬢様に間違いありませんから!」






と、見送ってくれたメイド達。お礼を言ってお母様とラルラと共に下に降りて玄関前で待っていたお父様に声をかける。振り返ったお父様はまずはお母様を見て身を見開き、そして、私を見て微笑む。







「アベスティーナ、シャルネラ。とても美しいよ。今日は2人が舞踏会を独り占めしてしまいそうだ。アベスティーナもシャルネラも。私の傍から離れないように。」







なんて、微笑みお母様をエスコートして馬車に乗り込む。その馬車は学園に向けて走り出した。






暫くして、学園につく。
お父様、私、お母様と降りればザワっと騒がしかった学園門前が一瞬にしてシーンとする。







「アベスティーナ。シャルネラ。行こうか。」






そう言って三人で会場に入ればこれまた静まりかえる。それに面白くてお母様と微笑みあっていれば、背後から声がかかる。







「マルフィード伯爵様、マルフィード伯爵夫人。お初にお目にかかります。シャルネラ様に仲良くしてもらっています、カーラルン子爵家が長女。マネラル・カーラルンでございます。」






「シャルネラの母、アベスティーナです。カーラルン家と言えば……バーバラちゃんの?私たちだけではなく、娘達との縁があるなんて。運命ですわね!これからも、娘と仲良くしてあげてね?」





「サルマドラだ。これからも頼む。」





「ありがとうございます!」






挨拶を済ませ、私は両親と別れてマネラルと行動することにした。立食パーティーだということで私たちは料理をとって食べる。







「そうそう。シャルネラ。この靴ありがとう!凄く歩きやすいの!不思議なことに、かかとの部分が高いのに隙間が空いてないからなのか、とっても歩きやすいわ!!まさか……」






さすがマネラル。分かってるわ!
そう、今日の学園の舞踏会には保護者、学園に生徒がいない貴族の方も参加出来る大規模な舞踏会なのだ。そして、私はこの会場を…………






「そうなのです!!このドレスやその靴は今度、シャルフィーで販売しようかと思い、是非仲良くしてくださっているマネラルにお友達のしるしとしてプレゼントしたのですが、履いてくださって嬉しいわ!このヒール、全体にそこがありますからとても歩きやすいのです。ダンスする時も、街を歩く時も、フラフラとバランスを気にすることなく姿勢を保てるのですよ!」









ザワザワとしていた会場。私たちの周りだけがやけにシーンとしている。奥様や令嬢。男性たちまでもが耳をすまし世間話をしながらもこちらの様子を伺っている。






「それに、シャルネラ様のそのドレス。思わず腰に手を回したくなり、エスコートしてあげたくなりますわね」





うっとりした顔で私を見る。私は満足気に微笑む。






「えぇ、そうでしょうとも!見てください。私の両親を。いつも中慎ましくしてらっしゃる両親ですが、今日はと、く、に!仲良く寄り添われてますわ!それはきっと、あのドレスを着た女性がさらに美しく誰の目にも触れさせたく無くない。もう、お父様はお母様だけにし注目してませんわ!!さらに、いつもより距離が近づいていてとても憧れの夫婦ですわ……私もああなりたい……」






次々とご婦人やご令嬢がかいたくなる、男性が女性にプレゼントしたくなるように販売文句をつらつらと重ねていれば会場がざわめく。販売文句をかき消され、誰が原因だ!なんて、当たりを見渡せば騒ぎの中心にティアラ・ユーレライ嬢とサーネル・アルファーナ王太子殿下がホームに入っていらっしゃった。






「あぁ!ティアラ!なんて美しいんだ!!俺の輝きがさらに神々しく輝いている!!」




「見てください!サーネル!食べ物が沢山あるよ!」







相変わらずのナルシスト加減を発揮しながらタキシードを身にまとう王太子殿下に、ホール中央にある料理をみて真っ赤なフリフリドレスをブワンブワン振り上げながら飛び跳ねるティアラ様をエスコートしている。






その背後からこの国の宰相の息子、長男のハーネル・ララルバと各部隊隊長の息子、長男のタラベラル・サルベラが現れる。






「ティアラ、あのデザート美味しそうですよ!」





「ティ、ティアラ……その、食べてみろ。」







サーネル王太子殿下とティアラ様が腕を組みお皿に乗せ合いっこしてる横で、デザートを皿に取りオススメするハーネル様。その横でデザートをあーんと照れながらしようとしているタラベラル様。






【まぁ、各部隊隊長の長男のタラベラル様が一人の女性にあんなこと……それに見てくださいな……あの締りのない顔……騎士としてだらしない。】






【婚約者がいらっしゃるというのに……しかも婚約者のマルフィード伯爵令嬢を差し置いて、あんなユーレライ商会の娘をサーネル王太子殿下がエスコートなさるだなんて……】





【シャルネラ様がお可哀想ですわ……】







なんて、そこらかしこから聞こえてくる。マネラルも私と王太子を見比べて悲しそうな顔をしているのが見える。そんな彼女に微笑みかける。






「シャルネラ……」





「大丈夫、あんなことに気を取られパーティーが楽しめないなんて損するわ。ほら、パーティーを楽しみません?」






なんて、商品の売り込みを聞いていたのに王太子立ちに気を取られた皆さんにオレンジジュースが入ったワイングラスを掲げる。そうすると少し周りが安心した顔で私を見てワイングラスを掲げパーティーを再開する。






「す、凄い。さすがシャルネラ。私なんて絶対に無理よ。」





「私も、私の掛け声?でパーティーを再開してくれるだなんて思いもしなかったわ……」







なんて、話していれば。3人の令嬢が歩み寄ってくるのが見えて身構える。が、三人の令嬢は挨拶するなりシャルフィーのファンだとか次の新作を楽しみにしてます。とか話して去っていく。それに呆然としていれば、三人の令嬢を筆頭にザワザワと集まりだし、ぜひ我が商会と!とかとか、色々言われて目が回りそうになっていた時。









「シャルネラ・マルフィード!!」







大きくもなく、小さくもなく、学園のホールに凛と響く声で呼ばれる。その声に会場がまたもやシーンとして、その声の人物から私までの道が割れて花道ができる。






その人物はこの国の王妃殿下で、少し怒った顔で私を見ている。その横には苦笑しながら私を見ている国王陛下と黒縁メガネの少し冷たそうな感じがするお母様のお兄様。ライバ・ララルバ宰相がいて、お父様、お母様が居た。







シーンとする中、王妃殿下がヒールを鳴らして私に歩み寄ってくる。それを見ながらも淑女の礼をする。








「アラマスカルフ。王妃殿下。」





「ええ、アラマスカルフ。シャルネラ。それより、そのドレス……素敵ね!アベスティーナと色違いではないですか。私もそのドレスが着たくなりました。シャルネラ、この後少し時間をいただきますね。」







おぉ……これは決定事項ですね?なんて、お母様とお父様を見ればお母様はとてもいい笑顔で頷いていて、国王陛下とお父様は苦笑していた。宰相様?宰相様は無表情ですとも。







「かしこまりました。」






「よろしい。」







満足気に微笑んでいる王妃殿下に微笑んで国王陛下は会場みんなに声をかけパーティーの挨拶を済ませ本格的にパーティーが始まった。


















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