社長の溺愛にとかされて
店に着くと、すぐさまリンゴ飴の屋台のおじさんに注文する。
慎也用に一番大きな物と、自分用に中ぐらいの物を買った。

「はい」

リンゴ飴を慎也に手渡す。

「そんなに聞きたかった?」

私はこくんとうなずく。

たこ焼きを食べた空と、リンゴ飴の包み紙をゴミ箱に捨て、
少し道から離れたスペースへと移動した。

慎也が真っ赤なリンゴ飴を舐めながら言う。

「昔話だけど、高校の時付き合ってた人がいて」

まあ、高校生なら彼女ぐらいいてもおかしくないし、
でもそれが私にどう結び付くか分からない。

「放課後、部活終わりふと教室へ行くと、
 その彼女と友人が話しているのが耳に入って、
 俺の悪口を言っているのを、偶然聞いてしまったんだ」

高校生の慎也にとっては、辛い思い出なんだろう。
何も言わず、私もリンゴ飴を舐めて、話しの続きを待つ。
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