社長の溺愛にとかされて
言った通り、慎也を救ったなんて大袈裟だと思う、
そんな立派な事はしていない。

でも、慎也が良かったって思ってくれているなら、
それで、ま、いっかって思えてくる。

慎也が私の事、好きでいてくれる訳が分かった。

私の過去、全て知ってもなお・・・

「慎也、時間ある?」

いきなりの事に慎也は驚いたようだった。

「どうしたんだ?」

「慎也の部屋、行きたい」

慎也がリンゴ飴を食べるのを止める。

「男の部屋来たいって、意味分かっている?」

「うん、でも、慎也の気持ち知って、それが一番いいかなって」

そう言って、首のチェーンに手を伸ばす。

心臓がどくんどくんと音を立てる。

自分でも大それた事をしてると感じている。

でも自分の気持ちに正直にいたかったし、慎也の気持ちを受け止めたかった。

心臓の音が響き、緊張で少し手が震える、それでもゆっくりチェーンを外す、
世界がスローモーションになったかのような錯覚を覚える。

指輪をチェーンから外し眺める。

慎也がくれた、3か月の約束・・・

付いていた指輪を、私の左の薬指にゆっくりとつける、
指輪はすっぽりと指に収まった。

その手を慎也にかざして、はっきりと言う。

「これでも、気持ち疑う?」

そう言うと、慎也の顔が近づき、軽いキスをした。
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