ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
それから約1ヶ月。
あたしは余計なことを考える時間を作らないようにするため、敢えて仕事に関することにどんどん取り組んだ。
3年生の担任の任務についての資料を読んだり、
進路指導のマニュアルに目を通したり、
数学授業に関する研究にも着手したり。
仕事以外のことを考えないように必死だった。
そうして迎えてしまった離任式当日。
その日も上空を飛んでいる旅客機が肉眼でもはっきりと確認できるくらい晴れやかな青空が広がっていた。
職員室にある入江先生のデスク。
元々、きれいに整頓されているけれど
その上に置かれていた教科書や参考書、マニュアル等の資料ファイルなどは既になくなっている。
事務職員に呼ばれている入江先生はそこにはいなくて。
置いてあるのは三ケ日産の有名なみかんのロゴがプリントされたダンボール1個だけ。
そのダンボールから顔を出していたのは御礼というのしが付けられた箱だった。
『本当に異動するんだ。』
ダンボールを見つめているうちに涙がこみ上げそうになった時に校内放送のスピーカーから聴こえてきた教頭の声。
「生徒の皆さんにお知らせします。この後、9時より離任式を行いますので、遅れないように体育館に集合して下さい。」
朝のSHRのない今日。
職員室にいた大勢の教師達もその声を合図に次々と椅子から立ち上がった。
「高島先生も行きますよね?体育館。」
『・・・うん。』
「本当に大丈夫ですか?」
『・・・ダメかもしれない。』
とうとう弱音を吐いてしまった。
今朝、入江先生の、教師生活感が色褪せてしまったデスクを見てしまってから、
“大丈夫” と強がることはもうできなかった。