ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方



「今日は素直なんですね。泣きたい時は胸、貸しますよ。」

『・・・八嶋クンのファンの女の子達に誤解されるからいらない。あたし、目の敵にされるのヤだよ~。あたしも女子生徒達にモテたいもん。』


できるのは、これ以上弱音を吐かないようにトボけるだけ

4月からはいつも頼りにしていた入江先生がいないこの学校で
自分の力でちゃんと立って教師をしていかなければならない

今、ここで弱くなったら
後輩想いの入江先生にも心配をかけてしまうかもしれない

でも、いきなり強くなることなんかできないから
今はトボけることで大丈夫だと見せかけるしかない

トボけ続けることは無理だろうから
あとは、今度こそ時間薬に頼るしかないよね
”入江先生がここからいなくなってからの時間を積み重ねその状況に慣れていく”
という時間薬に・・・・



『だから、心配しないで!あたしにはかわいいかわいい生徒達がいるから大丈夫♪』

「・・・・・・・・・・」

『何?』

「いえ。何も。」


そんなあたしにあきれたのか八嶋クンはそれ以降、あたしをつつくようなことを言うことなく、一緒に体育館に向かった。



在校生はもう春休み。

卒業生も大多数の生徒において進路が決まっているせいか
体育館に集まっている生徒達に緊張感はない。

そのせいもあってかざわつく体育館内。
離任する教師を送る側の教員達が座る席もほぼ空きがない状況。


どうやら出遅れたらしいあたし達は
空いている教員席に向かって腰を屈めながら、なるべく先生達の邪魔にならないように移動することに必死になっていた。
そのせいか、さっきまで誰もいなかった離任する教師達が座る席に彼らが既に座っていることに気がつかなかった。

ようやく座ることができたあたしの視界の端っこに見えた入江先生。
壇上をじっと見つめ、真剣な面持ちに見えた。

職員室ではあんなにも近くにいたのに
今日という日は手を伸ばしても到底届かない距離にいる

彼の生徒だった頃のあたしは
自分の卒業式では彼に見送ってもらう立場だったから
こうやって彼を見送る立場に自分がなるなんて・・・


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