ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
まあ、入江先生の “この人” があたしであるわけないよね
教師になってからのあたしは
入江先生にお世話になりっぱなしで
とてもじゃないけれど、彼を支えているような存在じゃないし
何といっても
告白してフラれてるし
『2回も・・・』
「高島先生?どうされました?」
『へっ?あっ、梅田先生、なんでもないです。』
「それにしても、こんな入江先生、初めて見ました。ご自分のこととかあまりお話にならないから・・・・・なんか・・・ドキドキしますね~」
隣に座っている梅田先生の心をくすぐったり、
あたしが勝手に自分かもなんて勘違いしてしまうような入江先生の離任の挨拶。
それは生徒達への一方的なメッセージという在り来たりな挨拶ではなく
“いろいろあったって、どんなことがあったんですか~?
女子生徒達だけでなく男子生徒達の興味関心をも刺激するようなものになっていた。
「質疑応答の場ではありません。入江先生、続きを。」
司会の教頭が仕切らずにはいられないものにもなっていて。
質疑応答の場ではないと釘を刺されたはずなのに
「具体的にそれが何かは流石に口にすることはできないですけど・・・・・・自分の気持ちが自分でもよくわからなくて、その人の心を傷付けた。そういうことです。」
入江先生は真っ直ぐな瞳のまま
生徒の問いかけにちゃんと答えた。
「情けないことに、その人がすぐ近くにいる環境が当たり前の状況に甘えてしまっていたせいで、傷つけてしまってから気がついた。自分が大切にしなきゃいけない人はこの人なんだということを・・・・・」
彼の気持ちがちゃんと籠められた答えを。
「だから、本当に大切だと想う人を失わないために、僕は自分の中に棲みつづけている“当たり前の状況”を自ら手放そうと思った。だから、僕は・・・・・・この学校から自ら去ることにしました。」
彼がなんで自らこの学校を去ることにしたかという理由を。