ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方


その後はいつもの離任式のような雰囲気で進行したが、
あたしにとっては、何かと色々なところから投げかけられる視線のせいで・・・・いつものような式ではなくなった。

式終了後、体育館を退出するときも。
離任される他の先生にお礼の挨拶をするために戻った職員室でも。


入江先生と話がしたいのに


「入江先生~コレ、水泳部から~!!!!!」

「寄せ書きか。ありがとな。」

「入江先生、ボク達も入江先生のことがダイスキで~す。」

「・・・・・あ、ありがとな・・・・」


入江先生が顧問をしていた水泳部の男子生徒達から放たれる
あたしの様子を窺う視線もビシビシと感じ、



「茜ちゃん~。入江先生からのラブコール、ちゃんと聴いてた?」

「またどうせ、ボケーとしていて聞き逃してじゃね?」

「え~あんなに大胆だったんだもん、聴いてたよね?」


担任を受け持つ2年3組の生徒達からの鋭いツッコミ色満載の直球な視線も受け止めていたせいで、

あたしはなかなか入江先生と話を交わす機会を悉く(ことごとく)逸していた。


『はァ~・・・・』


こんな視線の中で
入江先生があたしに課した問題の答なんか

出せないよ・・・・



「高島~。あんな騒ぎになって、忘れてるかもしれないけれど、今晩、数学科で入江先生の送別会やるから、ちゃんと来いよ。」


学校帰りにも入江先生とゆっくり話をするチャンスもなさそうだし・・・・


『は~い。野村センセ。』

「なんだ、そのやる気のない返事は?」

『いえいえ、送別会ですよね?あたし、今回は2次会の幹事ですもん。やる気、ありますよ~』

「お前、泣くなよ?最後の最後まで入江先生に心配かけるなよ。」

『ハイハイ、わかってますって。』


その後、予想通り、入江先生も私もいろいろな人に声をかけられ続けて、彼と話す機会なんて皆無だった。



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