ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方

自分の足のことより

『入江先生、どうかしました?』

そのことのほうが心配になった。


入江先生はまさかあたしに心配されるとは思っていなかったみたいで、若干驚いたような表情を浮かべ、

「ずっと前、、八嶋・・・」

『八嶋クン・・・ですか?』

「いや、いいんだ。」

言いかけたことを途中で止め、すぐさま苦笑いで誤魔化された。

彼が何を言おうとしたのか気になって仕方がないのに
誤魔化されたりしたせいで、なかなかそれを聴き出せず、気がついたら、あたしが下車する曳馬駅に近付いていた。


『あっ、降りなきゃ・・。』

「そうだな。」


離任式前も後も
送別会中も

そして

その帰り道の今も

もしかしたら、もうこれで会えなくなるかもしれないのに
あたしは入江先生にずっとお世話になっていた御礼すら言ってない

もうグズグズしていられない
ちゃんと言わなきゃ


『入江先生・・今まで本当にありがとうございました。本当はいろいろと想い出話しながら御礼とか言いたかったんですけど・・こんな時間になってしまって・・何から想い出せばいいのかわからなくて・・入江先生と会うのが当たり前が今日で最後かと思うと・・なんか・・・』


“間もなく、曳馬~曳馬です。お出口は右側です。”


『あ~、もう・・・時間がもうない・・・・』


車掌さんの車内アナウンスによって頭の中が完全にパニックになったあたし。
入江先生の顔も見れないぐらいヒドイ状態。


そんなあたしを見兼ねたのか


「・・・・時間なら作ればいい。」

『えっ?』

「送るよ。夜、遅いし。」


入江先生はあたしの手を引いて、駅に停車して開いたドアから降りてしまった。
彼の自宅の最寄り駅ではなく、あたしの自宅の最寄り駅で。
新人歓迎会の時の八嶋クンのように。



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