ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方



「泣かせちゃったな、ほら。」


入江先生はきちんとアイロンが当てられた紺色の男物のハンカチで頬に流れた涙を拭いてくれた。


『だって、ハンカチにちゃんとアイロンがかけられているし・・・・彼女とかいるんじゃ・・・』

「アイロンぐらい自分でかけないとな。」


自分に自信がなさすぎたせいで、まだ入江先生のスキが信じきれなかった失礼なあたしに
入江先生はそう言いながら、涙を拭いてくれたハンカチをズボンのポケットに入れてしまった。

洗濯してから返そうと思ったのに・・・
でも、今はそんなことを気にしている場合じゃない

アイロンぐらい自分でかける入江先生のスキ
それを信じられる自分にならなきゃ

ずっと心の中に棲み続けていた入江先生がスキという想いが
ようやく成就したんだから



「せっかく家の前まで来たけれど、少し歩かないか?」

『今から・・ですか?』

「もう夜遅いから無理にとは言わないけど。桜の花が満開らしいからな。」



あたたかい涙が流れ、胸がいっぱいの中での
突然の入江先生からの花見の誘い

断る理由なんてもう何もない



『行きたいです。桜の花を見に。あっ、せっかくだから・・・』

「ん?」

『南高まで行きません?ここからちょっと遠いですけど。』


私達のいる静岡県にはたくさんの公立高校がある

だからもう
入江先生と私が浜名南高校で一緒に過ごすことは
おそらくもうないだろう

離任式だった今日
離任する入江先生の周りには大勢の人がいて
彼と一緒に過ごす時間なんて皆無だった

だから
本当にこれで最後

同じ教師という立場で
彼と一緒に過ごした高校の校門前に咲く
南高の歴史と共に生き続ける立派な桜の花を
一緒に眺めたい

・・・・そう思う


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