ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
Σ1:ベクトルと時間薬

【Σ1:ベクトルと時間薬】   *数学教師:入江目線



“あたしを見て下さい。”

“蒼井じゃなく、あたしを。”



“あたしもやっぱり一歩進みます。”

“先生が蒼井に出会う前から、ずっと・・・入江先生のことが好きでした。”



“入江先生のベクトルの向きは・・変えられないんですか?”




こんなにも
自分の気持ちをはっきりと示した高島を見たのは初めてだったかもしれない

彼女のことは高校生の頃から知っている

彼女はいつでも明朗活発なイメージ
後輩の面倒見もよくて、誰からも慕われる存在
蒼井のことに対しては妹のように可愛がっていたぐらいだ

それは、教師になった今でも変わらない
同じ数学教師として
俺自身も頼りにしているところもある


先日、伶菜さんのウエディングドレス選びに付き合って貰ったのも
俺の中で高島なら相談しやすい
そう思ったから


そんな中、高島が蒼井の存在を気にしていることを知った俺

俺の中での蒼井が気になる存在であるということが
高島に見抜かれていたということも


“腕時計、外さないで下さい。”

“忘れてくるぐらいなら、外さないで。”




“偶然通りかかって、見ちゃいました。”

“でも、あたしには関係ない・・・”



今朝の真里さんとのやり取りも見られていたことも知った

高島がこだわっていた俺の腕時計
真里さんが届けてくれた腕時計

真里さんとは伶菜さんの親友

先週の土曜日、友人の日詠と伶菜さんが浜松でサプライズ挙式をした、その翌日。
日詠が従事している病院内でのアクシデントのために急遽、日詠は名古屋へ帰ることとなり、
まだ早朝で出かける準備ができていなかった伶菜さんを俺が浜松から名古屋へ送り届けた。
その際に、伶菜さんのことを心配しながら待っていた真里さんが一緒に昼食でもと誘ってくれて
一緒にランチを食べた人

その時、浜松からの運転で若干疲れていた俺は自分の腕時計を外してしまい
そのままそこの店に忘れて帰ってきてしまった。

それを届けてくれた真里さんと俺との関係を誤解されているらしかった。


そして真里さんと俺とのやりとりを見たと言いながらも
自分とは関係ないと言われて
高島の言動に対して違和感を感じずにはいられなかった。



< 67 / 202 >

この作品をシェア

pagetop