お助け部ッ☆
「よいか、そのキノコにはある言い伝えがある」
湯呑みに新しいお茶を注ぎ入れる老婆は、少し声を潜めて言った。
『やっぱ胡散臭いキノコには胡散臭い言い伝えが付き物なんだね』
「やかましい!黙って聞けェ!」
いちいち口を挟む姫香に嫌気が差した老婆は、イライラした口調で怒鳴る。
「ほら、おとなしくしとこーな?」
『はーい…』
神山になだめられ、口をつぐむ。
「1億」
『「1億?」』
「黄金のキノコの価値じゃ」
それを聞いた姫香と神山は荷物をまとめだした。
「おぬしら…まだ信じぬか……帰るなどもったいないこと『帰る?誰が?』
老婆の言葉を遮って、姫香が言った。
その姿は、ジャージにポニーテール。首にタオルをぶら下げ、軍手をしている。
背中には、みっちぃから預かったと翔平に渡された大きな籠。
神山は、やはりイノシシの着ぐるみだが、ちゃんと籠を背負っていた。
『キノコ狩りじゃぁぁぁ!!』
「1億は俺のもんじゃぁぁぁ!!」
『はっ!?あたしだよ!』
「じゃあ山分けだッ!」
『おうよ!兄貴ィ!!』
嵐のように飛び出していった2人。
「やっと行った……」
そう呟いた老婆の声は、さっきまでのしゃがれた声じゃなく、
「あとで竜にデートしてって頼みに行こーっと!こんなに働いたんだし」
莉央のイトコ、ゆっきーこと相沢祐希の声だった。
「ってか1億って聞いて飛び出すとか…姫香って相変わらず単純……神山って人は…カッコよかったかな」
老婆……の格好をした祐希は、お助け部にとある試験の助っ人を頼まれていた。
「あたし、女優向いてるかも」
山奥の小屋で、祐希の独り言がポツリと響いた。