花はいつなんどきも美しく
かじって手に取ると、今さっき愛子が食べていたパンだ。


「美味しくなかったから、あげる」


……渡し方よ。
もう少しあったんじゃないかな。


声かけて手渡しするとかさ。
というか、普通そうすると思う。


「美味しい?」


パンを飲み込み、文句を言ってやろうとしたのとほぼ同じタイミングで、そんな質問をされた。


「まあ、食べれないことはないかな」
「うーわ、聡美、味覚バカなんじゃない?」


さらっと人を貶すの、やめてくれないかな。


愛子は二つ目のパンの袋を開けている。
どこまでも自由というか、なんというか。


文句を言う気力も失せる。


私は愛子に無理やり渡されたパンを食べきり、飲み物を買うために席を立つ。


「りんごジュース飲みたい」


財布を持って行こうとすると、すかさずそんなことを言ってきた。


「……はいはい」


自分で買いに行け、と言えないのは愛子が怖いから。
なんて、絶対本人に言えないけど。


自販機がある休憩室に行くと、まるで死んでるかのように座る園田雪がいた。
テーブルにはスマホだけが置いてあり、背中は信じられないくらい丸まっている。


少し離れたところには、園田雪の取り巻きのような女性社員がいる。


まあ、こんな園田雪に声をかけられるわけないか。
話しかけるなオーラも出てるし。


私も、もう関わらないに越したことはないだろうし。
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