さよなら、片想い

「このまえはプリンごちそうさまでした」


 週明け、岸さんが一人でいるところを見かけた。
 近づいてから言ったのに私の顔をじっと見るだけで反応がない。


「このまえはプリンごちそ」「聞こえてるよ。そうじゃなくて」

 食い気味にツッコミが入る。この人、なかなかできる。


「人の顔面まじまじと見て、さては目でも悪いんですか?」

「裸眼で両目とも1.5あるよ」

「ちょっと目がいいからって調子に乗らないほうがいいですよ」

「なんの話してるんだよ」

「だから……プリン?」

「それはわかったから」


 そう言われると、ほかに話すこともなく。
 沈黙というほどでもない間が私をそわそわさせた。


「元気なら、いいんだ」

 あ、はい、と私はおとなしくなってしまう。

 心配を、されていたようだ。
 宏臣と鉢合わせしたときのことを。

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