さよなら、片想い
 元旦はなにしていた、という話になった。兄が帰省したものの飲み歩いたり遊びにいったりしてばかりでほとんど在宅しない、と私がこぼすと、社交家のお兄さんだねと言われた。

「君まで外泊したら、ご両親は寂しがるかな」

 岸さんが私の肩を抱いた。私は猫のように頭をすり寄せる。

「わかんない。家にいたらいたで、交わす会話もないし」

「ないの? 君が?」

「お父さんとはね。母とは普通」

 岸さんは元旦に実家の兄夫婦のところに顔を出し、一泊してきたと言った。

「一日に続々と親戚が集まってきて、ダイニングテーブルだのこたつだの小さい集まりができて飲んだり食べたり。今日は駅伝を見てた」

「ユイトくんは元気でした?」

「ああ。サンタは一緒に来なかったのかと聞かれたんで、家族で過ごしているって言っといた。納得してたよ」

「かわいい」

「あと、ユイトの祖父ーー兄嫁の父が同じ着物業界の常務やっているらしくて。俺もよく知らなかったんだけど、こっちの会社に来ないかと執拗に絡まれて面倒だった」

「それは、お疲れさまです」

 寄りかかったまま手を伸ばして頭を撫でてあげると、岸さんはもっと撫でろとばかりに近づいた。と思ったら私の唇にキスを落とした。

「……続けても?」

「鍋は? 買い物は?」

「忘れてない」

 私がどんな返事をしたって岸さんにはキスをやめるつもりなんか端からなかったのだ。
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