さよなら、片想い
 テレビではお正月特番を流していたけれど、ふたりともあまり観ていなかった。
 鍋と焼き鳥を食べてお酒を飲んだ。余ったご飯は焼おにぎりの下拵えをして明日の朝食にまわすことにする。
 お風呂上がりにストレッチをしていたら、岸さんに見つかった。岸さんの入浴中にこっそり、と思っていたのに。失敗した。

「身体柔らかいよな。学生のとき、なにやってた?」

「新体操を少々」

「それは知らなかった」

「弱小部だったしすぐ辞めちゃったけど、せっかく柔かくできあがったのになくすのも惜しいなって思って」

 そこで岸さんが仕事中もやってたねと言ったものだから、驚いた。

「やってました?」

「友禅部に行って、隅っこでなにか動いてるなあと思うとたいてい名取さんで」

「待って、人をそんな落ち着きのない人みたいに言わないで。ちゃんと仕事してますって!」

「わかってるよ。俺もそうだし、皆そうだよ。デスクワークだからあちこち凝り固まる」

 それなら、とソファで立ち膝になって肩を揉んであげた。小学生のころはよく親に頼まれてやっていたけれど、ずいぶん久し振りだ。岸さんの肩は厚みがあって適度に筋肉もついていて、すぐに手がくたびれた。
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