さよなら、片想い

 岸さんはさっきの比じゃないくらいに驚いた顔で振り返ったけれど、なにかを察したようだった。
 こんな申し出をしてくれた。


「実は急な用件が入りまして、今、名取に話していたところなんです。これから名取を借りたいんですが、よろしいですか?」

「え、あっはい。それはもう全然……そっか、結衣は仕事か」



 宏臣もなにかを察したようだ。

 でもきっと、岸さんと違ってずれている。
 今から指名の仕事が入るなんてやるなあ、とか、たぶんそんな類の推測をしている。


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