ねぇ・・君!
みなべ町にさよならを告げる時
みなべ町にいる英明の姉の家に
来ていた英明は、車の渋滞を考えて
午前9時に、みなべ町を出ることを
英明の姉夫婦に伝えた。
「家に帰るんだったら、
これを持って帰りなよ」
そう言って英明の姉は、
自家製の梅干しと自家製の梅ジャム
そして自家製でつくっていた
梅ジュースと梅酒をお土産に
持たせたのだ。
とくに、梅ジュースは
清香が気に入ったようで
ペットボトルで2リットルの瓶に
5本用意していたのだ。
そして梅酒は、普段は使わない
焼き物の入れ物に入れていた。
「お義姉さん、たくさんの
お土産をありがとうございます」
「清香ちゃん、元気な赤ちゃん産むのよ。
赤ちゃんが産まれたら
旦那と一緒に行くからね」
「お義姉さん、ありがとうございます」
「英明、これから清香ちゃんが
大変になるからね。
あんまり、無理をさせるようなことは
止めなよね」
「わかっているよ、姉ちゃん」
「本当にわかってんの?
清香ちゃんのおなかの赤ちゃんは、
梅の木の精霊なんだから
大切にしてよね!」
梅の木の精霊がもたらしてくれた
小さな命が清香のなかで育っている。
それは、みなべ町の伝説で
梅の木に鴬が来た時に梅の木の精霊が
何かをもたらしてくれる兆しがあると
信じているから言えるのだろう。
梅の木は女性と同じ気持ちを持っている。
それだからこそ、梅の木は大切に守ろう
としているものを知っている。
もしかして、英明と清香が夫婦となるのは
梅の木の精霊が教えてくれたのだろうか?
清香は、たくさんの梅の木を見て
そう感じていた。
「おばさま、お義兄さん、お義姉さん、
お世話になりました」
「気をつけて帰ってくださいね。
おなかの赤ちゃんは、梅の木の精霊が
守ってくれますからね。
良い知らせを楽しみにして
待っていますからね」
「ありがとうございます」
「英明くん、今度来る時は
父親どうしで酒を飲もうな」
「義兄さん、ありがとうございます」
そして、英明が自分の車に
お土産と自分たちの荷物を積んだ。
「清香、そろそろ行こうか」
そう言うと英明は、自分の車を
大阪に向かって走らせた。
車の中で英明は、清香にこう言った。
「オレは、みなべ町の自然が
好きなんだ。だから、おまえを
連れて行きたかったんだ」
そう言った英明は、
うれしそうにほほえんでいた。
この人についてきてよかった。
この人となら子供と一緒に
温かい家族になっていける。
梅の木の精霊が守ってくれている
我が子と一緒に清香は、
英明のために尽くしていこうと
そう思っていた。
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