キス時々恋心

「宮川さん家の雪次郎君!?小さい頃、周りの大人たちの真似して飲めもしない甘酒飲んで、吐き出したいのを必死でやせ我慢してた、あの雪次郎君!?」

初音はようやく絞り出した彼との思い出をそのまま口にした。
ずいぶんと昔の記憶。
初音がまだ小学生で、もっと幼かった彼が金魚のフンのように後ろをついて歩いていた頃の話だ。
「懐かしい……」と目を細めた。

「えっ、そこ!?」

雪次郎は思わず声を上げた。
懐かしさに浸る初音の穏やかな表情とは裏腹に、彼は心底驚いているような顔をしている。

「“えっ、そこ!?”って何が……?」と初音は首を傾げた。
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