キス時々恋心

これからの彼との時間を幼馴染みとして過ごすべきか、レンタル彼氏として過ごすべきか初音は悩んだ。

「ね……ねぇ、宮川君……?」

初音は躊躇(ためら)い気味に彼の事を呼ぶ。
小さい頃、なんて呼んでいたかなんてよく覚えてないし、昔の知り合いだからといって下の名前で呼べるほど図々しくもなれない。

そんな初音の思いをよそに、雪次郎は「そんな呼び方やめてよ」とクレームをつけてくる。

「じゃあ、なんて呼んだらいいの?」
「そうだなぁ……。なら、ユキって呼んでよ。みんなそう呼んでる」
「分かった。ユキ君だね」と初音が了承する。

しかし、雪次郎は「“君”はいらない」と未だ不満そうに返答した。
それから、初音の耳元に自らの唇を寄せて「……今の俺って初音さんの“彼氏”なんでしょ?」と囁いたのだった。

寄せられた唇から(ほの)かな熱が全身にめぐる。
初音の中で一つの答えが出た。
彼との時間はレンタル彼氏とそのお客として過ごす事。
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