キス時々恋心

幸運にも、その日のうちに遼と会える事になった。
初音は濡れてしまった服を一度着替えに戻り、遼との待ち合わせ場所に向かった。

初めての時と同じ、駅前のロータリー。
遼は約束の時間ちょうどにその場所へ現れた。
白い乗用車に乗り、パリッとしたスーツに身を包んで。
サイトに掲載しているとおりの落ち着いた大人の男性。

「お待たせ。さぁ、乗って」

遼はスマートに助手席のドアを開け、初音をエスコートする。
初音は「ありがとうございます」と会釈して助手席に乗った。
そして、すぐに車は走り出した。

「ハツさん、この間は急に代理を立ててしまって本当に申し訳無かった。こちらの手違いで不快な思いをさせてしまって……」

遼がまず口にしたのは、初音に対しての謝罪の言葉だった。
初音が彼の事を以前に依頼した事をきちんと把握した上のものだ。

「いいえ。それは別に……」

初音は首を軽く振って、怒っていないと意思を示す。
そのお蔭で雪次郎と再会できたのだから、むしろ感謝しているくらいだった。
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