雨がふったからそれで
と彼が聞いてきた。
「家に帰って確認してみるよ。
後で連絡する。」
「お、サンキューな。」
と他愛のない会話。
私の家は町に唯一あるCDショップ
大昔に爺ちゃんが部屋の一部を
スタジオにして以来、
地元のバンドマンたちの溜まり場だ。
嫌いな祖母がいる家だけど
バンドマンたちが出入りして
スタジオから溢れてくる音が
私の寂しさを埋めてくれた。
だからその空間があたしの唯一の居場所
「それじゃ、連絡よろしくっ!」
と笑顔を残して別の道を行く彼
夕日に染まった帰宅路を
歩いていく彼の後ろ姿を
少しだけ眺めてた。
ひっそりと想うことは許されたくって。
私はこの想いを口にすることは無い。
だって、そうすればきっと
大切な2人を同時に失ってしまうと思うんだ。
やってみなきゃ分からないって?
そんな無鉄砲なこと私にはできないよ。
これ以上
傷つくのは、ひとりになるのは、
耐えられる気がしないんだ。
だから今日も私は
溢れそうになる彼への気持ちを
心の奥底に仕舞い込んで蓋をするの。