夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜

「俺にかけてきていいの?」

「え、どうして?」

「だって新婚だろ。俺と連絡取ってたら海堂さんはいい顔しないと思うけど」

「なに言ってるの、そんなはずないでしょ。進は大事な幼なじみなんだから。前は頻繁にメッセージしてたじゃない。それがパッタリ連絡をよこさなくなるなんて」

「いや、まぁ、新婚なわけだし、俺も気を遣ってるんだよ」

「べつに新さんはなにも言わないわよ」

「そうかなぁ? でもいい気はしないはずだよ」

「なによ、進も新さんの味方ってわけ?」

「いや、味方とかじゃないけど。気を遣うよ、新婚だから」

新婚ってそう何度も言わないでよ。進なら話を聞いてくれると思ったのに、新さんに遠慮しているのか逃げ腰だ。

「海堂さんと新婚早々喧嘩でもしたのか? だったら話くらい聞くけど」

「そういうんじゃないけど……やっぱり、もういいよ。じゃあね」

「おい、桃子」

進の戸惑う声を最後に通話を切った。

それからカレーのスパイスを調合してじっくりコトコト煮て、小麦粉でとろみをつけて出来上がったカレーの味はひどいものだった。

「か、辛すぎ……っ」

どうやら激辛スパイスの量をまちがえて多量に入れてしまったようだ。どうしてこんな初歩的なミスを。

尋常じゃないほどピリピリ舌がしびれて、口の中が燃えるように熱い。しまいには涙まで浮かんだ。

水で何度も喉を潤しようやく口の中から辛さが消えた頃に、ちょうどご飯が炊けた。でも肝心のカレーがこれじゃあとても食べられやしない。

結局おにぎりを握って米だけで夕食を済ませた。

< 56 / 120 >

この作品をシェア

pagetop