夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
米が余ったからよ、捨てるのも冷凍するのもあれだし。プチトマトと茹でブロッコリーと焼鮭で彩りを整え、なんとかあるものでお弁当らしくはなった。
ふたり分のランチバッグを抱えてマンションを出る。食べてくれるだろうか。嫌いなものはなかったかな。それさえもわからないからソワソワしてしまう。
そもそもどうやって渡せばいいんだろう。
病院の通用口に着き、不審者のごとく辺りを見回す。昨日ここにいたからって、今日もいるわけがないのに。
救急外来横を通ったときにたまたま扉が開いていたので隙間から覗いた。いない、か。
「なにをやっているんだ」
「ひっ!」
まさかと思いながらも恐る恐る振り返ると、スクラブ姿の新さんが立っていた。
当直明けだからなのか目がトロンとしていて眠たそう。髪の毛も乱れて、いつものピシッとした緊張感はない。
「驚いてばかりだな、桃子は」
わずかに頬をゆるませて新さんが笑った。院内ではめったに見せない柔らかい顔だ。
「で、どうしたんだ。俺に用事か?」
「あ、えっと。これ、もしよかったら……作りすぎてしまったので」
「え?」
おずおずとランチバッグを差し出すと、新さんは目を見開いて固まった。