探偵さんの、宝物

「……そしてね、楓堂さん。探偵事務所に誘ってくれてありがとう。
 やっぱり私はこの力で人を助けたいんだって、気付くことができました」

 小さくお辞儀をした後、恥じらうような笑顔を見せた。

「全て、楓堂さんのお陰ですよ」
 それがすぐに、いたずらっぽい笑顔になる。

 ――ああ、もう、計画なんていらない。
 今すぐに何もかも打ち明けて二度と離れていかないようにしたい衝動に駆られた。

 一度目を瞑り、深く息を吸い込んでから話し始める。

「尾花さん、僕は……」



「あ、このオムライス美味しそうですね!」
 彼女は既に歩き出していて、喫茶店の黒板のランチメニューを指さしていた。
「……そうですね」

 今日二度目の大きな空振り。僕は空虚感に苛まれた。
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