探偵さんの、宝物
 尾花さんに導かれるままに進むと、公園に出た。
 小さな池があり、低木が赤い花を咲かせている。

 ――突然だが、尾花さんに予知夢とサイコキネシスの力があるように、僕にも天に与えられた才能が二つある。

 一つは人の顔をすぐに覚えて忘れないこと。これはとても仕事に役立っている。
 二つ目は……猫に好かれることだ。



「うわぁ……」
 尾花さんが僕から一歩二歩と距離を取った。

「楓堂さん、これだけ猫を集める力があるなら、専門業者にも負けないんじゃないですか?
 猫探しの依頼も受けていい気がしますよ」

 黒にぶちにキジトラ、毛の長いやつにしっぽの短いやつ。
 僕の足元には、公園中の猫がわらわらと集まっていた。

 尾花さんは口元を押さえて笑いを堪えている。いや、堪えきれてない。
 全く、他人事だと思って。

「これだけ集まると見分けが付きません。
 ……尾花さん、笑ってないで助けてもらっていいですか」



 結局迷い猫は見つかり、僕が抱きかかえて佐々木さんに引き渡しに行った。

 仕事初日は別々だったが、今日は彼女の希望で二人で遅いランチを食べた。
 このオムライスとコーヒーの美味しい店は、僕らの昼の定番になった。
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