冷徹社長の初恋
「絲、緊張する必要はないぞ。俺のよく行く、馴染みの店だ。俺の好きなものを、絲にも食べさせてやりたくてな」

「ありがとうございます。楽しみです」

「絲、前から思っていたが、俺に敬語を使う必要はないぞ。俺は絲の上司じゃないからな。むしろ、俺の方が絲にアドバイスをもらっている身だ。だから、かしこまった話し方をする必要はない」

「そ、そう言われましても……春日さんは私よりずっと大人の男性ですし、大きな会社の社長さんなので……」

「そんなことは関係ないぞ、絲。絲は、俺が絲よりずいぶん歳上なことが気になるか?」

前を見据えて運転している春日さんを、そっと伺い見た。
私が気になっていることは、そんなことじゃない……

「……私が気になるのは、春日さんが歳上だってことじゃないんです」

「それじゃあ絲は、他に気になることがあるのか?」

赤信号で車を止めて、春日さんが私を見つめる。私の心臓が、早鐘を打ち始めた。

「私が気になっているのは……私が春日さんに比べて、ずいぶん歳下だってことです」

そう伝えると、春日さんは目を見開いた。そして、素早く私を抱き寄せると、私の額にそっと口付けて体を離した。

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