冷徹社長の初恋
信号が青に変わり、再び車を発進させた。
私は驚きのあまり、何も言えずに俯いていた。

「すまない。嫌じゃなかったか?」

「は、はい。嫌じゃなかったです」

「そうか」

春日さんは、どことなく安堵した声で続けた。

「絲は、俺がかなり歳上なことではなく、自分がかなり歳下なことを気にしていたのか。そんなのなんの問題もない。俺は今……」

珍しく春日さんが言い澱むから、おもわず顔を上げて、春日さんを見つめた。

「すごく嬉しいと思っている。絲が、歳の離れた俺を、突き放さないでいてくれたことを」

「わ、私も、春日さんが私を、歳下すぎるって言わなかったことを、すごく嬉しく思っています」

再び赤信号で車が止まった時、春日さんは私の顎を優しく持ち上げて、キスをした。
そして、何事もなかったかのように、車を発進させた。
私は飛び出しそうな心臓を、必死で抑えて俯いた。
春日さんは、それ以降何も言わなかった。でも、目的のお店に着いて車を降りる時、いつものように差し出された手を取ると、そのまま離さずにいてくれた。

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