冷徹社長の初恋
「町田さん。僕じゃだめかな?」

「えっ?」

川原先生の言っていることがわからず、顔を上げたら、真正面から熱い視線を向けられていた。

「本当は、今受け持っている子達が手を離れた時に言うつもりだったんだけど。僕は、町田さんのことがずっと好きだった。子ども達に真摯に向き合って、何にでも一生懸命になる君のことを、2年以上も見てきて好きになった。
でも、それを年度の途中で伝えたら、町田さんを困らせることななると思って、待っていたんだ」

川原先生が、私のことを好き……


「でも、こんなふうに君を奪われて、傷つけられているのを見るのは耐えられない。僕だったら、君を裏切るようなことはしない。不安になるようなこともしない。同じ職種だから、君の悩みもわかってあげられる。
春日さんのような贅沢はさせてあげられないけれど、僕だったら同じ目線で先を見ていられる」

「わ、私、別に贅沢をしたいとかじゃなくて……」

「わかってる。町田さんがそういう人じゃないってことぐらい。ずっと見てきたんだから。
一度冷静になって、僕のことも考えてみてくれないか?」

あくまで感情的にならず、切々と語りかけるように言われて、自分もだんだんと落ち着いてきた。

「そんなふうに言ってくださって……ありがとうございます。春日さんのことも、川原さんのことまで、ゆっくり考えさせてください」

「ああ。もちろん。
町田さんがどんな結論を出そうとも、仕事上は今まで通りでいてよ。変に意識しないで。子ども達は敏感だからね」

「はい」

川原先生の、その心遣いがありがたかった。


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