冷徹社長の初恋
「お待たせしました」

注文したコーヒーとケーキが運ばれて来て、一旦話を中断した。

「おいしそうですね」

「ああ。食べよう」

意外にも、春日さんは甘い物が大丈夫なようだ。

「おいしいです。春日さんは、このお店によく来るのですか?」

「いや、初めて来た。秘書の清水に聞いた」

「秘書……ですか?」

「先日の見学の時に、俺の横にいた男だ」

やっぱりあの人、秘書さんだったのか。

「ああ、あの方。やっぱり秘書の方なんですね。教員の世界には、秘書と呼ばれる役職はないので、新鮮でした」

「そうか。絲はなんで教師になったんだ?」

「月並みなんですけど……自分が小学生の時の担任の先生が大好きで、自分もあの先生みたいになりたいって思って、目指したんです。あと、子ども好きなのもありますね」

「ほう。だが、最近は教員の労働時間の問題なんか、よくニュースで取り上げられているが、大変なんじゃないか?」

「そうですね。定時なんて全く関係ないですし。休日出勤もあたりまえです。外部委託の検討なんかも言われますけど、私は性格上嫌ですね。受け持った子は、トータルで見ていたいですから。そうしたいぐらい、この仕事が好きなんです」

「絲には、教員が天職なんだな」

春日さんが目を細めて微笑んだ。厳しそうなイメージが大きかっただけに、思いもよらない優しい微笑みに、一瞬ドキンとした。

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