きみこえ
エイプリルフール if 前編 ワンderful Holiday
四月一日、春の麗らかな休日、陽太は暖かそうな日差しに誘われる様に家を出た。
特に目的等はなく、ただ散歩にでも行こうと思っての事だった。
春の風に陽気な日差しが気持ち良く、歩は自然と進み、気が付くと公園に来ていた。
「おおっ」
陽太は目の前の光景に、思わず声を上げた。
公園では沢山の桜の木が植えてあり、風に吹かれる度に花びらを散らしていた。
陽太は満開の桜も好きだったが、散りかけの桜も舞う花びらが美しくて好きだった。
公園の桜を眺めながら歩いていると陽太はある異質な存在に気が付いた。
「ん? なんだあれ?」
陽太が見たのは桜の幹に隠れるように、こちらを見ている小学生位の女の子だった。
それも、普通の格好ではなく、つばの広い赤のとんがり帽子に赤い瞳、赤のマント、赤のヒラヒラとしたスカートに赤のブーツと、全身赤で揃えた出で立ちだった。
赤じゃないと言えるのは茶色がかった髪に白い肌くらいだった。
言うなれば、テレビアニメにでも出てきそうな魔女っ子スタイルで、陽太は普通にコスプレか何かだと思っていた。
隠れているつもりであろうが、大きな帽子とその場にそぐわない格好が嫌でも目立っていた。
陽太は辺りを見たが保護者等は居ないようだった。
なんとなく気になった陽太はそっと少女に近付いた。
「あの、君どうしたの? もしかして迷子だったりはしないよね?」
「ふわわわ、み、見つかってしまったのです!」
少女の声は幼く、妹の日和が小学三年生位の頃を思い起こした。
「え、そりゃそんな目立つ格好してたら見つかると思うけど・・・・・・」
「見つかってしまったのなら仕方がないのです! あなたが春野 陽太さんですね!」
少女は観念したのか木の裏から姿を現し、自分の身長よりも高い星やらハートやらゴテゴテ飾られたステッキを陽太に向けた。
「え? そうだけど、なんで俺の事知ってるの?」
陽太は脳内の記憶を漁ったが、過去に少女と会った記憶はどこにも見つからなかった。
「細かい事は気にしてはイケないのです! 将来ハゲるのです!」
「は、ハゲ・・・・・・、君は誰なの?」
「私は魔法少女かっこ見習いかっことじるメルリーナなのです☆」
メルリーナはくるくると回りながら目元にブイサインをあて決めポーズで言った。
「へ、へぇ・・・・・・そうなんだ。それは凄いなぁ」
子供の遊びなのだろうと、取り敢えず陽太は話を合わせる事にした。
「こほん、今日はあなたに変身の魔法をかけに来たのです。魔法少女たるもの灰かぶり娘をお姫様に、カボチャを馬車に変えたり出来ないといけないのです」
それはもう魔法少女と言うより魔女なのではと思いつつも陽太は黙っておいた。
「変身って何にかな?」
「これなのです!」
メルリーナは陽太に一枚の写真を見せた。
「そ、それは!」
そこに写っているのはハロウィンの時、陽太が狼男の格好をしているものだった。
「なんでそんなの君が持ってるの?」
「魔法少女育成学校でこの格好をさせるのが課題だと言われたのです。さあ、観念してワンちゃんの格好になるのです!」
「それ狼男なんだけどな・・・・・・」
そう呟いた陽太は完全に油断していた。
メルリーナの魔法に抵抗する間もなく少女は詠唱をどんどん進めていた。
「メタモルフォーゼ!!」
「うわっ!」
メルリーナがそう杖を振りかざしながらそう仕上げの呪文を唱えると陽太の体は煙に包まれた。
「ク・・・・・・」
陽太は気が付くと目線がいつもより大分大分低くなっているのを感じた。
最初は地面に倒れたのかと思っていた。
だが、どう手足に力を入れてもこれ以上立ち上がる事が出来ず、首だけ上を向けるとメルリーナが青い顔をしていた。
「あわわわわ、やってしまったのです!」
陽太は嫌な予感がし、下を見た。
すると、そこにはフワフワとした毛を纏い、まるで犬や猫の様な手足があった。
信じたくはなかったが、その手足は自分の意思と呼応して動いた。
まさか、まさかと思いながら陽太は公園にあった池のほとりに近付いた。
鏡の様な水面には茶色い毛並み、三角に尖った耳、フリフリと動くしっぽ、犬種で言うならば小さ目の柴犬、豆柴の様な犬の姿が映っていた。
「キャンキャンキャン!(なんじゃこりゃーー!)」
陽太は普通に声を出したつもりだったが勿論犬の鳴き声しか出なかった。
「どうやら本当にワンちゃんにしてしまったのです・・・・・・」
「キャンキャンキャキャンキャン!(おい、これどうなってるんだよ! 早く元に戻してくれ!)」
「・・・・・・えーと、ワンちゃんから人に戻す魔法はまだ習ってないのです」
メルリーナは罪悪感で陽太の訴える様なつぶらな瞳から目を逸らして言った。
「キャン? クゥーンクンクン?(なに? じゃあ俺、ずっとこのままなのか?)」
早く戻せと言わんばかりに陽太は慣れない手足でメルリーナの足元をグルグルと回ったり足に飛びついたりした。
その様はまさに犬の行動そのままだった。
「何かの文献でカエルの王子様にお姫様がキスをしたら戻るというのがありました! そうすれば・・・・・・」
「ウーーー(それ、おとぎ話だろ)」
明らかに嘘くさい話に陽太はジト目で唸った。
「あははは、な、なんとか元に戻す方法を探してくるのです! それまで大人しく待っているのです! あ、そうそう、私は特別な訓練を受けているので犬語でも会話出来ますが、他の人間には鳴き声にしか聞こえないから気を付けるのです」
そう言ってメルリーナは走ってどこかに行ってしまった。
「クゥウウン・・・・・・(はあ、これからどうしよう・・・・・・)」
ぽつんと取り残されて池に映る自分の姿を見ていると、本当に犬になってしまったのだなと悲しくなった。
このまま元に戻れなかったら誰か良い飼い主に拾ってもらえるだろうかなどと考えた。
そうこうしていると、天気は一変し、ポツポツと雨が降り出した。
「クゥーン(しかも雨とか、ツイてないなー)」
どこか雨宿り出来る所を探さなければと思った時、自分の体が宙に浮くのを感じた。
「ワワン?(うわ、なんだ?)」
くるりと体を回され柔らかい手の主と目が合った。
そこには、まるで可愛いものを見つけたと言わんばかりにキラキラと目を輝かせたほのかが立っていた。
四月一日、春の麗らかな休日、陽太は暖かそうな日差しに誘われる様に家を出た。
特に目的等はなく、ただ散歩にでも行こうと思っての事だった。
春の風に陽気な日差しが気持ち良く、歩は自然と進み、気が付くと公園に来ていた。
「おおっ」
陽太は目の前の光景に、思わず声を上げた。
公園では沢山の桜の木が植えてあり、風に吹かれる度に花びらを散らしていた。
陽太は満開の桜も好きだったが、散りかけの桜も舞う花びらが美しくて好きだった。
公園の桜を眺めながら歩いていると陽太はある異質な存在に気が付いた。
「ん? なんだあれ?」
陽太が見たのは桜の幹に隠れるように、こちらを見ている小学生位の女の子だった。
それも、普通の格好ではなく、つばの広い赤のとんがり帽子に赤い瞳、赤のマント、赤のヒラヒラとしたスカートに赤のブーツと、全身赤で揃えた出で立ちだった。
赤じゃないと言えるのは茶色がかった髪に白い肌くらいだった。
言うなれば、テレビアニメにでも出てきそうな魔女っ子スタイルで、陽太は普通にコスプレか何かだと思っていた。
隠れているつもりであろうが、大きな帽子とその場にそぐわない格好が嫌でも目立っていた。
陽太は辺りを見たが保護者等は居ないようだった。
なんとなく気になった陽太はそっと少女に近付いた。
「あの、君どうしたの? もしかして迷子だったりはしないよね?」
「ふわわわ、み、見つかってしまったのです!」
少女の声は幼く、妹の日和が小学三年生位の頃を思い起こした。
「え、そりゃそんな目立つ格好してたら見つかると思うけど・・・・・・」
「見つかってしまったのなら仕方がないのです! あなたが春野 陽太さんですね!」
少女は観念したのか木の裏から姿を現し、自分の身長よりも高い星やらハートやらゴテゴテ飾られたステッキを陽太に向けた。
「え? そうだけど、なんで俺の事知ってるの?」
陽太は脳内の記憶を漁ったが、過去に少女と会った記憶はどこにも見つからなかった。
「細かい事は気にしてはイケないのです! 将来ハゲるのです!」
「は、ハゲ・・・・・・、君は誰なの?」
「私は魔法少女かっこ見習いかっことじるメルリーナなのです☆」
メルリーナはくるくると回りながら目元にブイサインをあて決めポーズで言った。
「へ、へぇ・・・・・・そうなんだ。それは凄いなぁ」
子供の遊びなのだろうと、取り敢えず陽太は話を合わせる事にした。
「こほん、今日はあなたに変身の魔法をかけに来たのです。魔法少女たるもの灰かぶり娘をお姫様に、カボチャを馬車に変えたり出来ないといけないのです」
それはもう魔法少女と言うより魔女なのではと思いつつも陽太は黙っておいた。
「変身って何にかな?」
「これなのです!」
メルリーナは陽太に一枚の写真を見せた。
「そ、それは!」
そこに写っているのはハロウィンの時、陽太が狼男の格好をしているものだった。
「なんでそんなの君が持ってるの?」
「魔法少女育成学校でこの格好をさせるのが課題だと言われたのです。さあ、観念してワンちゃんの格好になるのです!」
「それ狼男なんだけどな・・・・・・」
そう呟いた陽太は完全に油断していた。
メルリーナの魔法に抵抗する間もなく少女は詠唱をどんどん進めていた。
「メタモルフォーゼ!!」
「うわっ!」
メルリーナがそう杖を振りかざしながらそう仕上げの呪文を唱えると陽太の体は煙に包まれた。
「ク・・・・・・」
陽太は気が付くと目線がいつもより大分大分低くなっているのを感じた。
最初は地面に倒れたのかと思っていた。
だが、どう手足に力を入れてもこれ以上立ち上がる事が出来ず、首だけ上を向けるとメルリーナが青い顔をしていた。
「あわわわわ、やってしまったのです!」
陽太は嫌な予感がし、下を見た。
すると、そこにはフワフワとした毛を纏い、まるで犬や猫の様な手足があった。
信じたくはなかったが、その手足は自分の意思と呼応して動いた。
まさか、まさかと思いながら陽太は公園にあった池のほとりに近付いた。
鏡の様な水面には茶色い毛並み、三角に尖った耳、フリフリと動くしっぽ、犬種で言うならば小さ目の柴犬、豆柴の様な犬の姿が映っていた。
「キャンキャンキャン!(なんじゃこりゃーー!)」
陽太は普通に声を出したつもりだったが勿論犬の鳴き声しか出なかった。
「どうやら本当にワンちゃんにしてしまったのです・・・・・・」
「キャンキャンキャキャンキャン!(おい、これどうなってるんだよ! 早く元に戻してくれ!)」
「・・・・・・えーと、ワンちゃんから人に戻す魔法はまだ習ってないのです」
メルリーナは罪悪感で陽太の訴える様なつぶらな瞳から目を逸らして言った。
「キャン? クゥーンクンクン?(なに? じゃあ俺、ずっとこのままなのか?)」
早く戻せと言わんばかりに陽太は慣れない手足でメルリーナの足元をグルグルと回ったり足に飛びついたりした。
その様はまさに犬の行動そのままだった。
「何かの文献でカエルの王子様にお姫様がキスをしたら戻るというのがありました! そうすれば・・・・・・」
「ウーーー(それ、おとぎ話だろ)」
明らかに嘘くさい話に陽太はジト目で唸った。
「あははは、な、なんとか元に戻す方法を探してくるのです! それまで大人しく待っているのです! あ、そうそう、私は特別な訓練を受けているので犬語でも会話出来ますが、他の人間には鳴き声にしか聞こえないから気を付けるのです」
そう言ってメルリーナは走ってどこかに行ってしまった。
「クゥウウン・・・・・・(はあ、これからどうしよう・・・・・・)」
ぽつんと取り残されて池に映る自分の姿を見ていると、本当に犬になってしまったのだなと悲しくなった。
このまま元に戻れなかったら誰か良い飼い主に拾ってもらえるだろうかなどと考えた。
そうこうしていると、天気は一変し、ポツポツと雨が降り出した。
「クゥーン(しかも雨とか、ツイてないなー)」
どこか雨宿り出来る所を探さなければと思った時、自分の体が宙に浮くのを感じた。
「ワワン?(うわ、なんだ?)」
くるりと体を回され柔らかい手の主と目が合った。
そこには、まるで可愛いものを見つけたと言わんばかりにキラキラと目を輝かせたほのかが立っていた。