きみこえ
彷徨える羊と二人の執事
ほのかは勢いで保健室を飛び出したは良いものの、実際はまだまだ自由時間があり暇を持て余していた。
冬真に連絡をしようと思った時、スマホを巾着袋に入れていて教室に忘れてきてしまっていた事に気が付いた。
自分の教室に戻ろうかと思った時、目の前に大きな看板を手に持ったイカの被り物をした生徒が現れた。
「タコ焼きのタコ無しイカ焼きはイカがですかー? イカだけに! うちのタコ焼きはタコの代わりにイカを入れてます! 是非お立ち寄りを」
タコの代わりにイカの入ったタコ焼きなのか、この場合イカ焼きなのか訳の分からない食べ物にほのかは興味を覚えた。
だが、その横から今度はバナナの着ぐるみを着た生徒が現れた。
「いやいや、ここは是非ともうちのクラスのチョコバナナ天国へ! 通常のチョコバナナもあれば三本分チョコで固めたデラックス版もあって・・・・・・」
「それより、うちのクラスのスライム釣りはいかがですか! 上手く行けば取り放題ですよっ!」
ほのかは次々と現れる客引き係に困惑していた。
三人同時にクラスのアピールをし始めたが、もはや集中出来ず何を言っているのか分からなくなってしまった。
目が回りそうになっていると、ほのかの前に広い背中が立ちはだかった。
「申し訳ありませんが、こちらのお嬢様は先約がございますので、どうかお引き取りください」
黒い燕尾服を着ていて、背が高く、一瞬誰なのだろうと思ったが、その燃える様に赤い髪をほのかは良く見知っていた。
横から回り込んで顔を見ればやはり夏輝だった。
「いきなりなんだよ、俺が先に声掛けたのに!」
「ですから、先約がですね・・・・・・」
なおも食下がる生徒に夏輝は苛立ちを抑えながらにこやかに言ってみせた。
「先とかそんな事より本数限定のロイヤルチョコバナナの方がいいに決まって・・・・・・」
「ああ? せ・ん・や・く・だっつってんだろ?」
夏輝は早くも我慢の限界に達し、凄みを利かせた低い声と、刃物の様に鋭い目つきで言った。
客引きの生徒達は揃って体を震わせた。
『すいませんでしたーーー』
三人は一斉にそう叫びながら逃げていった。
「よし、行ったか」
「よし、行ったかじゃありませんよ、まったくあなたは・・・・・・」
後ろから現れたのは翠だった。
翠は夏輝と同じ燕尾服を着ていて、その姿はまさに執事の格好だった。
夏輝はいつもと違って髪をウェーブのきかせたオールバックヘア、そして翠も右のこめかみ辺りの髪を後ろにかき上げたヘアスタイルで、いつもよりオシャレに見えた。
「何だよ、ダメだったのかよ」
「そりゃダメでしょう、何ですかあの脅しの様な声、数メートル先からでも聞こえてきましたよ」
「まあ脅しだからな」
開き直る夏輝の様子に翠は深い溜息を吐いた。
「執事失格です。クラスに執事じゃなくて裏社会の人間が居るっていう定評がついたらどうするんですか。それに月島さんの意思も尊重しないと」
「あー? だって約束したもんな?」
夏輝はさっきまでの殺気はどこへやら、ニカッと笑いながらほのかに言った。
ほのかは確かに文化祭前に夏輝達とクラスに遊びに行くと約束していたのを思い出し、コクリコクリと頷いた。
「ほれみろ!」
「はいはい」
得意気に言う夏輝に翠は呆れ顔で返事をした。
「それにしても可愛らしいお姿ですね」
翠はほのかの頭を優しく撫で、したり顔で夏輝を見やった。
「あっ!」
すると夏輝は負けじとほのかの頭を撫でた。
「ああ、本当だな! そのカッコ、か、可愛いじゃねえか」
【ありがとうございます】
「月島さんのクラス、なかなか盛況みたいですね」
「あー、そういや中間結果二位だっけ? すげーよな」
「ええ、一位とも僅差みたいですし、まだ結果は分かりません。応援していますよ」
この会話の間、夏輝と翠はひたすらにほのかの頭を撫で回していた。
翠は夏輝がほのかを撫でるのを止めないのは対抗心からだというのは分かっていた。
だからこそ、やっきになっている夏輝の表情や反応を見て楽しんでいた。
だが、ほのかが沸騰しそうな位顔を赤くさせて困惑しているのを見て、そろそろ解放してあげる事にした。
「さて、ここでずっと話しているのもなんですから、私達のクラスに案内いたしましょう」
翠はほのかに手を差し出した。
「それもそうだな」
夏輝も翠とは反対の手を差し出し、ほのかは頷くと二人の手を取った。
ほのかは勢いで保健室を飛び出したは良いものの、実際はまだまだ自由時間があり暇を持て余していた。
冬真に連絡をしようと思った時、スマホを巾着袋に入れていて教室に忘れてきてしまっていた事に気が付いた。
自分の教室に戻ろうかと思った時、目の前に大きな看板を手に持ったイカの被り物をした生徒が現れた。
「タコ焼きのタコ無しイカ焼きはイカがですかー? イカだけに! うちのタコ焼きはタコの代わりにイカを入れてます! 是非お立ち寄りを」
タコの代わりにイカの入ったタコ焼きなのか、この場合イカ焼きなのか訳の分からない食べ物にほのかは興味を覚えた。
だが、その横から今度はバナナの着ぐるみを着た生徒が現れた。
「いやいや、ここは是非ともうちのクラスのチョコバナナ天国へ! 通常のチョコバナナもあれば三本分チョコで固めたデラックス版もあって・・・・・・」
「それより、うちのクラスのスライム釣りはいかがですか! 上手く行けば取り放題ですよっ!」
ほのかは次々と現れる客引き係に困惑していた。
三人同時にクラスのアピールをし始めたが、もはや集中出来ず何を言っているのか分からなくなってしまった。
目が回りそうになっていると、ほのかの前に広い背中が立ちはだかった。
「申し訳ありませんが、こちらのお嬢様は先約がございますので、どうかお引き取りください」
黒い燕尾服を着ていて、背が高く、一瞬誰なのだろうと思ったが、その燃える様に赤い髪をほのかは良く見知っていた。
横から回り込んで顔を見ればやはり夏輝だった。
「いきなりなんだよ、俺が先に声掛けたのに!」
「ですから、先約がですね・・・・・・」
なおも食下がる生徒に夏輝は苛立ちを抑えながらにこやかに言ってみせた。
「先とかそんな事より本数限定のロイヤルチョコバナナの方がいいに決まって・・・・・・」
「ああ? せ・ん・や・く・だっつってんだろ?」
夏輝は早くも我慢の限界に達し、凄みを利かせた低い声と、刃物の様に鋭い目つきで言った。
客引きの生徒達は揃って体を震わせた。
『すいませんでしたーーー』
三人は一斉にそう叫びながら逃げていった。
「よし、行ったか」
「よし、行ったかじゃありませんよ、まったくあなたは・・・・・・」
後ろから現れたのは翠だった。
翠は夏輝と同じ燕尾服を着ていて、その姿はまさに執事の格好だった。
夏輝はいつもと違って髪をウェーブのきかせたオールバックヘア、そして翠も右のこめかみ辺りの髪を後ろにかき上げたヘアスタイルで、いつもよりオシャレに見えた。
「何だよ、ダメだったのかよ」
「そりゃダメでしょう、何ですかあの脅しの様な声、数メートル先からでも聞こえてきましたよ」
「まあ脅しだからな」
開き直る夏輝の様子に翠は深い溜息を吐いた。
「執事失格です。クラスに執事じゃなくて裏社会の人間が居るっていう定評がついたらどうするんですか。それに月島さんの意思も尊重しないと」
「あー? だって約束したもんな?」
夏輝はさっきまでの殺気はどこへやら、ニカッと笑いながらほのかに言った。
ほのかは確かに文化祭前に夏輝達とクラスに遊びに行くと約束していたのを思い出し、コクリコクリと頷いた。
「ほれみろ!」
「はいはい」
得意気に言う夏輝に翠は呆れ顔で返事をした。
「それにしても可愛らしいお姿ですね」
翠はほのかの頭を優しく撫で、したり顔で夏輝を見やった。
「あっ!」
すると夏輝は負けじとほのかの頭を撫でた。
「ああ、本当だな! そのカッコ、か、可愛いじゃねえか」
【ありがとうございます】
「月島さんのクラス、なかなか盛況みたいですね」
「あー、そういや中間結果二位だっけ? すげーよな」
「ええ、一位とも僅差みたいですし、まだ結果は分かりません。応援していますよ」
この会話の間、夏輝と翠はひたすらにほのかの頭を撫で回していた。
翠は夏輝がほのかを撫でるのを止めないのは対抗心からだというのは分かっていた。
だからこそ、やっきになっている夏輝の表情や反応を見て楽しんでいた。
だが、ほのかが沸騰しそうな位顔を赤くさせて困惑しているのを見て、そろそろ解放してあげる事にした。
「さて、ここでずっと話しているのもなんですから、私達のクラスに案内いたしましょう」
翠はほのかに手を差し出した。
「それもそうだな」
夏輝も翠とは反対の手を差し出し、ほのかは頷くと二人の手を取った。