三日間の幸福
なんで上手く笑い流すことができなかったんだろう。

「え、まじで?」

平良に一瞬で見抜かされてしまった。
私は首を横に振ってはみるけど、平良の目がみるみる下がっていく。

「まじか。全然気付かなかった。」

平良がその場に座り込む。

「よく分かんないけど、体しんどいんじゃないの。」

だからずっと体調悪かったんじゃん。

私は頷くこともできない。
その場に立ち尽くしてしまった。

ほんの数秒だったと思う。
すぐに平良の口から言葉が出てきた。

「なんとかするか。」
「え?」
「なんとかするしかないじゃん。」

固まってる私を見上げる。

「親にまず相談するしかないな。」

頭が真っ白になる。

親に言うなんて、そんなつもり全くなかった。
だって産むつもりもない。

「待って。言わないで。」
「え?」
「絶対に言わないで。」

私の言葉に躊躇う平良。

「言わないでって言っても、育てるってなったら助けてもらうしかないじゃん。まだ俺学生だし。」
「平良、大丈夫。産まないよ。」

私は平良の目を見ることなく言った。
平良がじっと私を見てきたのは分かった。

「産もうよ。」

低く響く平良の声。
私はただ首を横に振る。

「頑張ろうよ。」

平良の言葉が胸をチクチクを痛めてくる。

「頑張ろうよって、私まだ大学3年だよ?就職先も決まってないのに、妊娠、出産って。」

私はひたすら床を見つめながら言った。
平良の深いため息が聞こえた。

それから2週間後、私は中絶手術を受けた。

また元の何もない体に戻った。
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