妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
ずっと弾いていないとは思えないほど滑らかに、彼の指先はメロディーを奏でていく。
何をやらせても完璧。そんな彼のお嫁さんになれて、すごく幸せ。
心の中でのろけつつ、私も徐々に我慢できなくなって鍵盤へと指を乗せる。
ふたりで奏でる恋の曲。
寄り添い連弾するこの状況はとびきりロマンチックで、綺麗に音が重なり合う瞬間は楽しくて心が踊る。
手と手がぶつかり、メロディが途切れた。見つめ合う距離が徐々に近づき、唇が触れる。
「次は俺がおねだりしても良い?」
熱っぽい口づけを繰り返しながら、恭介君がそんなことを聞いてくる。
「何を?」
「……分かってるくせに」
鍵盤の上にあったはずの彼の手が、いつのまにか私のブラウスのボタンを外しにかかっていた。
慌ててその手を両手で押さえつけて、首を横に振る。
「だめ! 一緒にご飯作る約束しているし、きっともうそろそろ晶子先生とお義父さん、ここに来るよ」
晶子先生のことはお義母さんときちんと呼ぶときもあるけれど、癖になってしまっているため、ほとんど「晶子先生」と今まで通りの呼び方になってしまう。
晶子先生もそれで良いよと言ってくれていて、私はその言葉に甘えてなかなか直せずにいるのだ。
そして今日は、これまで何度も晶子先生には夕食をご馳走になっているため、私がおもてなししたくてふたりをお招きしたのだ。
結局は、「一緒にご飯を作りましょうよ。その方が楽しいわ!」という晶子先生の提案から、完全なるおもてなしにはならないのだけれど、キッチンに一緒に立てると考えるとそれはそれでとても楽しみである。
「今日は断ろう」
「だめ。誘ったの私だし」