妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
ひと言でもいい。なぜ私に話してくれないのか。
『アオトの方が羽柴を欲しかったのかしら。あなたと結婚したら都合が良かったとでもいうのなら、いろいろ納得だわ』
先程電話から浴びせられた女性の声音が脳裏によみがえり、くらりと視界が揺れた。
目を閉じて、息を吐き出す。
父がいた時ならまだしも、私と羽柴コーポレーションの間には距離がある。
だからそれに関して、私と結婚しても優位に働くことはないはずだ。
しかし、そう思ってはいても、高志さんとのことがあるからか、私の知らないところで何か動きがあるのではとつい勘ぐってしまう。
そこまで考えて首を大きく横にふる。
結局はただの噂話にすぎないかもしれないのだ。
なにが事実か分からないからこそ、恭介君と話がしたい。
彼ならきっと全てを知っている。
帰りが何時になるかわからないけれど、起きて待っていよう。
そう心に決めて、夕食の準備に取り掛かる。彼からの連絡待ちつつ、ひとり夕食を済ませた。
ピアノの練習をするべきかもと思いながらも、なかなか行動に移せぬまま時間だけが過ぎていく。
お風呂に入り気持ちを整えようとしたけれど、それもうまくいかない。