妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
その瞬間、ふつりと感情の糸が途切れた。涙が溢れ落ちると同時に、私は力いっぱい叔父の手を払いのける。
「恭介君はそんな人じゃない。私はあなたの言葉なんて信じない。幸せにすると言ってくれた彼の言葉を信じる」
無我夢中で口をついて出たのは、必死の強がりだった。
私は彼を信じ続けるためにここに来た。
だから会うよりも先にくじける訳にはいかないというのに、叔父の攻撃的な言葉に不安定だった心が脆く崩れてしまいそうになる。
胸が苦しくて視線を落とした時、まるで私を支えるかのようにそっと肩に手が添えられた。
驚き顔を上げて目を見張る。
「恭介君」
いつのまにか隣に恭介君が立っていた。か細く呼びかけると、彼は叔父を鋭く睨みつけたまま、私を軽く引き寄せた。
「お、お前! よくも俺の前に出てこられたな!」
叔父さんの喚きを、恭介君が冷笑で一蹴する。
貫禄すら感じさせる恭介君の余裕の表情に、流石の叔父も口ごもる。
「息子と美羽を結婚させてまでしがみつこうとしていた程だ、地位や名誉を愛しているのは俺じゃない。あなたの方ですよ」
「な、なにを!」
「しかも話を聞く限り、息子を副社長の椅子に座らせたら、美羽を雑に扱うつもりだったようですね。彼女を奪われずに済んで本当に良かったと心底思う。怒りすら感じるくらいに」