妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
アオト株式会社の一、二階はミュージアム的な空間になっていて、一般にも公開されていると兄から聞いたことがある。
なんでも、自社製の楽器が、古いものから最新のものまで並べられ歴史を感じることができたり、運営している管弦楽団の紹介や軌跡、フィルムコンサートなども楽しむことができるらしい。
前々から来たいと思いつつなかなか機会に恵まれなかったのだが、待ち望んでいた訪問がこんな形になってしまったのは残念で仕方がない。
社員用のセキュリティを抜けて、エレベーターホールの前で足を止める。
物珍しくて辺りをきょろきょろ見回している途中、エレベーターが到着し、中から男性が数人降りてきた。
それぞれが恭介君の姿にハッとし、背筋を伸ばしたのち頭を下げ、彼の前を離れていく。
エレベーターに乗りこむと同時に、彼が最上階である四十階のボタンを押す。
静かに上昇するのを感じていると、恭介君と目があった。
「そういえば、ここに来るのは初めてだったか?」
「うん。やっぱり広いね。圧倒されちゃう」
「そうか? 羽柴も同じようなもんだろ」