妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~

恐々と室内に足を踏み入れる。

一般社員とは違う大きなデスクや、応接用の革張りのソファーの立派さ。空間の重厚感に飲み込まれそうになった。

しかし、先日家で見かけた彼が購入したビジネス書が本棚に並んでいたり、部屋の隅のハンガーポールにも彼のお気に入りのチェスターコートがかけられているのを目にすると、幾分肩の力が抜けていく。

もちろん自宅の書斎よりここの方が何倍も広いけれど、所々で恭介君を感じるためあまり居心地の悪さを感じない。

あらためて室内をぐるり見回し、あぁそうかと思い至る。

今というよりも、引っ越しした当初の彼の書斎のイメージに近いのだ。


「恭介君の書斎にいる気分」

「まぁ、同じようなもんだな。ソファーに座って楽にしてくれ」


私の感想に笑みを浮かべた彼にそう促され、止まっていた足が自然とソファーへ向かう。

テーブルを挟んでソファーに座り、私たちは見つめ合う。


「呼び出さず、俺から美羽の所に行くべきだったと反省している。大丈夫か?」


羽柴コーポレーションの前で叔父さんに私が詰め寄られたことを気にしているのだろう。

すぐに、頬笑みと共に思いを返す。


「恭介君が守ってくれたから、もう平気」


恭介君も心もち表情を柔らかくさせ、「それならいいが」と呟く。

そして僅かな沈黙ののち、膝の上で指を組んでから、恭介君が切り出した。


「何から話そうか」


私は短く息を吐き出してから、勇気を出して最初の一言を発する。


「ずっと半信半疑だったけど、さっきの叔父さんの態度で、アオトが羽柴を吸収するのは本当のことなんだってわかった」


言いながら気持ちが高ぶり、徐々に前のめりになっていく。

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