妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
デスクの脇や本棚の前などに、小さなダンボールがいくつか重ね置かれている。
本棚の本もよく見るとすかすかで、自宅の書斎の方が充実しているくらいだ。
もしかしたら、彼はこの部屋にやってきたばかりで、持ち込んだ荷物を片付けている最中なのではと想像する。
そこでハッとする。だから私は、引っ越ししたての頃の彼の書斎を連想したのだろう。
秘書の女性が私の前に紅茶入りのティーカップを静かに置いた後、恭介君へと歩を進めた。
そして小声で彼になにかを話しかけ、彼も秘書に頷いて言葉を返した。
秘書の女性はドアまで戻ると、一度こちらへと体を向け、表情を崩さぬまま「失礼します」とお辞儀をし出て行った。
再びふたりっきりになったというのに、完全に言葉を見失いなにも喋れない。
自然と目が向かうのは、彼のネームプレート。
改めて見ても、やっぱり副社長と書かれている。
「内示が出たばかりで、ご覧の通りまだ荷物の片付けも終わってない」
頭の中を読まれたのかと思うほど的確に、恭介君が私に説明する。
「そうだったんだね。おめでとう。……それなのに私ときたら。ごめんなさい」