妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~


「俺が羽柴の社長にって話は週刊誌で見たんだろ? 吸収合併と同時進行で俺の昇進もあってうちの内部も結構ごたついていたから、それを嗅ぎつけた記者が勝手にそうだと思い込んだみたいだ」


まんまと踊らされていたのを知り恥ずかしくなるも、それならばと新たな不安がわき上がる。


「それじゃあ羽柴には誰が?」


アオトの上層部の誰かが羽柴のトップに就くとなると、気持ちが揺らぎ出す。

恭介君なら良かった。でもそうでないのなら……。

ずっと心の奥底で揺らめいていた真剣な思いが頭をもたげた。


「それは既に決まってる」


はっきりと告げられ、わずかに目の前が暗くなる。

拳を握りしめて、浮かんでいた兄の顔を必死にかき消した。

羽柴を救ってもらうのに、その上、社長に兄をだなんて虫の良すぎる話だ。

受け入れなくちゃと気持ちを押し殺し、「そっか」と笑みを浮かべた時、またドアがノックされた。

先ほどと同じように、恭介君の「どうぞ」という声に続いてドアが押し開けられ、秘書が姿を現わす。


「お連れしました」


秘書はひと言発し、扉の向こうにいる誰かへと目配せをした。

ゆったりとした足取りで現れ出た人物に、私は息をのむ。

今まさに思い描いた人物がそこにいるからだ。

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