妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~

淡々と思いを言葉にしてから、兄が恭介君へと体を向ける。


「恭介。……いや、青砥副社長。この先も、よろしくお願いいたします」


兄の真剣な眼差しを受け、恭介君がほんの一瞬目を見開いてみせた。

しかし、すぐに口元に笑みを浮かべて、兄へと手を差し出す。


「こちらこそよろしく」


握手を求められたことで、兄の表情にようやくいつもの笑顔が戻ってくる。

がっちりと握手を交わして視線を通わせるふたりの表情はとても輝いていて、見ている私まで胸がいっぱいになる。

握手をしたままで、兄が私を見て、微笑みかけてきた。


「俺は父さんのようになる。しっかりと思いは引き継いでるから」


決意と共に、兄は空いている手で己の胸を叩いた。

呼応するように私の胸も熱くなり、幼い頃、羽柴コーポレーション内で目にした社員と共に笑う父の姿が色濃く蘇ってくる。

きっと今、兄も私と同じ思い出を心の中で思い描いているに違いない。

こぼれ落ちそうになった涙を指先で拭ってから、繋がりあった彼らの手の上に私も自分の手を重ね置いた。

穏やかな空気に包まれながら、私たちはそれぞれに笑顔の花を咲かせた。




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