妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
「他の楽器で声をかけているのも、私の知り合いの元教え子たちばかりで、ほとんど趣味として続けている子達なの。だから美羽ちゃんも、来てくれた子供達に弾いて聞かせるくらいの気軽な気持ちで良いの。曲だって子供達に馴染みのある比較的簡単なものを選ぶ予定で」
そうは言われても、以前の私のイメージで誘ってくれたのなら、がっかりさせてしまうだろう。
自分の部屋に電子ピアノはあるから時々は弾いている。
けれどそうは言っても、ピアノが大好きで暇さえあれば弾いていた昔と比べたら、どうしても劣ってしまう。
残念ではあるけれど、私ではなく誰か他の人にお願いした方が賢明な気がする。
きっぱり断るべきだと自分の中で判断を下した時、恭介君が呆れたようにふっと笑った。
「言うほど鈍ってなかったけどな」
「そうよね? 私にもちゃんと聞こえていたわ。安心してお願いできるってウキウキしながら戻ってきたのよ」
恭介君に晶子先生が同意する。ふたりからの言葉は嬉しいけれど、私では荷が重すぎるという気持ちの方がどうしても勝ってしまう。
眉毛をハの字にしていると、晶子先生が「とりあえず座って」とテーブルに持っていたトレーと紙袋を置く。