妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
「これ、マドレーヌだから。持って帰って、良かったら大和ちゃんと一緒に食べてちょうだい」
「ありがとうございます」
紙袋を指して出た説明に頭を下げた私に、晶子先生が柔らかく微笑む。
そして「あなたの分も持ってくるわね」と恭介君に一言残し、慌ただしくレッスン室を出て行った。
恭介君はソファーへと腰掛け、自分の隣に手を差し向けつつ「どうぞ」と私を促す。誘われるがまま、私も彼の隣に腰掛けた。
「……あの。やっぱり、私じゃなくて他をあたった方が」
弱々しく喋りかけると、恭介君はトレーからティーカップを掴み上げ、紅茶をこくりと一口飲んだ。そして落ち着いた声で力強く話しだす。
「ずっと弾いてるって大和から聞いていたし、実力が落ちていないこともさっきので分かった。だから俺は自信を持ってこの件を美羽に任せることができる」
真っ直ぐに私を見て、おまけに自信たっぷりに彼は断言した。揺らぎない彼の様子にどうしようと狼狽えながらも、気になっていた質問をぶつける。
「恭介君もこの件に関わっているの?」
先ほどの晶子先生とのやり取りや、恭介君が働いているアオト株式会社が音楽関連の事業を得意としていることからそんな疑問が浮かんだのだ。
恭介君はすぐにこくりと頷き認めた。