妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~

そうだった。

私の夢は晶子先生のような素敵なピアノの先生になることで、幼い頃は、大人になったら弟子にしてもらいたいなんて冗談に見せかけた本気の思いを繰り返し言葉にしていたほどだ。

けれどその夢も、環境が変わったことで心の中から消えてしまった。

私自身も忘れていたというのに、それを彼は覚えてくれていたのだ。感極まって目尻に涙が浮かんだ。


「無理強いはしない。けれど心残りになってるはずだ。これから俺は美羽を支えていくつもりだから、美羽もこれを機に夢を取り戻したらいい」


真摯な声で紡がれた言葉に、心をきゅっと掴まれる。

私が心の重苦しさを捨てきれずに生きてきたように、恭介君も私に対して心を痛めてくれていたことが彼の痛みを感じているような表情から伝わってくる。

彼から目を反らせない。


「一週間後、来週の金曜日にまた会えるか? 返事はその時にくれればいい」


恭介くんの思いに応えたい。生まれた感情が一気に膨らんでいく。


「うん、ありがとう。前向きに考えてみる」


今日からの一週間を、新しい環境に飛び込むための勇気を貯める時間として使いたい。


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