妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
常日頃、『従業員あってこその羽柴コーポレーション』と社員を家族のように大事に思っていた父は、よく叔父と意見をぶつけ合わせていた。
叔父は利己的なタイプの人間で、自分の意思に背く者は容赦なく切り捨てるという一面を持ち合わせている。
そんな叔父が父の理念を引き継ぐはずもない。社員たちから不満が噴出し始めると圧力をかけて押さえ込み、時は手荒な手段を使ったりもしていた。
だから兄が入社した時には、父が大切に守ってきた会社はすっかり殺伐とした場所へと変わってしまっていたのだ。
兄の入社に関しても叔父は難色を示していたらしいが、さすがに父と親交の深かった大株主や父寄りの役員たちからの意見を突っぱねることはできなかった。
だからこそ、父派だった人々から期待を受ける兄は、叔父にとって邪魔な存在でしかないのだろう。
入社から一年経った頃、会社から追い出す機会を見逃さないよう叔父が目を光らせて俺を監視しているとぼやいた兄の疲れた顔を、今でもはっきり覚えている。
私は兄の力になりたいという思いをさらに強くし、大学で経営を学び、当然のように羽柴コーポレーションへの入社を希望した。