妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~

しかし、ダメだった。

何だかんだ理由をつけて、叔父に阻止されてしまったのだ。

茫然自失になるも、なんとかムラヅマ商会で内定をもらい、兄の負担になるのは避けることができたけど、叶わなかった入社をしばらく引きずってしまった。

もちろん今はムラヅマ商会の一員として誇りを持って仕事をし、毎日が充実しているけれど、……それでもチャンスが訪れたら、私は羽柴コーポレーションに入ると思う。

私にとって、父の会社を取り戻すとは兄が社長になることだからだ。そのためにできることがあるならなんだってする。

そんな強い思いに囚われている私でも、ふとした瞬間切なさに襲われ動けなくなることがある。

とっくに夢など手放しているというのに、近所の家からピアノを練習する音を耳にしたり、ピアノ教室の看板が目についてしまったりした時、胸が苦しくて泣きたくなる。

だから、恭介君からのさっきの言葉は私の心に深く深く突き刺さった。

再び夢を持っても良いのかなという感情は怯えに近い。

兄だって沢山のことを諦め、その上で必死に叔父に食らいついているというのに、私だけが好きな道に進むのは正直心苦しい。

< 27 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop