妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
言いながら、兄が真顔で肩を竦めた。
改めてどうして呼び出されたのかを考えれば考えるほど、私は兄のように冷静ではいられなくなってくる。
兄の横を歩いてエレベーターへと進みながら、背筋を震わせる。
本当に何を言われるのだろう。
きっと会社の話なら部外者の私は呼び出さず、兄とだけ話をするだろう。
私にも関係あることと言ったらなんだろう。
エレベーターへと乗り込みぼんやり考え込む私の横で、兄が突然ふふっと笑った。
思わず顔を上げると、なんとも楽しそうな兄の顔。
「恭介と会ったのは久しぶりだろ? どうだった?」
「ど、どうだったって言われても」
兄の変な質問が、再び私の頬を熱くさせる。さらに格好良くなってただなんて言えるはずもなく、「別に」と誤魔化した。
「恭介、久しぶりにお前と会えて喜んでただろ? 美羽は恭介にとっても妹みたいなものだからな」
「……妹?」
無意識に繰り返した自分の声音は、あからさまなくらい不満げだった。
それに兄がびっくりした様子で私を見つめ返してきて、心の中に焦りが生じる。
「お兄ちゃんなんて二人もいらない。お姉ちゃんが欲しい」
「……悪いな。俺に結婚の予定はない」
「うん、わかってる。彼女いないってことくらい」