卒業まで100日、…君を好きになった。

「拓が安心するよ。いま拓はすごく不安がってるから。もうすぐ拓の公立入試があるし。応援してあげてよ」



そこまで話したところで、またノックの音が響いた。

入ってきたのはお盆を持った拓だった。


お盆には水と薬、それから小さな土鍋がのっている。



「姉ちゃん……おかゆ、食える?」

「ありがと、拓。いまね、拓のこと話してたんだよ」

「知ってる。ちょっと聞こえてた」



拓はおそるおそるといった風に、お父さんを見る。

お父さんも仏頂面のまま、拓を見た。


それからわたしがおかゆを食べている間、父と息子はぽつりぽつりと話しをして。

たどたどしく、お互いの意見を伝え合った。


お父さんは拓に店を継いでほしいと思ってるけど、強制するのはやめて。

拓は大学まで、自分で好きなように選択できることになった。


それまでに、拓に自分だけの道が見付かればいいなと思う。



「姉ちゃん。……ありがとう」



お父さんがいなくなったあと、そう言ってはにかんだ弟の顔を、わたしはたぶん、一生忘れないだろう。




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