一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~

エピローグ

翌日、夢谷弁護士から海音に連絡が入った。

佐和田の罪は、傷害罪などのいくつかの罪状で刑事告訴をすることができるが、告訴するか、それとも慰謝料のみの示談にするかを聞かれた。

今回はあくまでも佐和田の私怨による単独の諸行。

風太郎も海音も、佐和田の再犯を防ぐために刑事告訴を選び、その代わりに野瀬産業の佐和田産業への融資取り止めは考え直してもらえるように野瀬に相談すると伝えた。

近藤駿太について。

佐和田の共犯ではなく、佐和田との婚約破棄後に、佐和田本人から聞かされた海音の人物像や浮気の情報を信じ、以前から好きであった萌音を守ろうとして起こした行動だとわかった。

こちらは、今後、海音と萌音の邪魔をしないと約束することで、長嶺教授の研究室にも今まで通り置いてもらえることになったそうだ。

しかし、今後はますます長嶺教授の監視が厳しくなることだろう。

「結局、最後は私達が活躍する場面は少なかったね」

「まあ、それだけ俺たちの周りのソウルメイトが強力だってことだろ?」

ようやく解決の糸口を見つけた海音は、大きく深呼吸をした。

仕事の手を止めて

「で?・・・萌音、俺が運命の片割れ、ツインソウルだって認めるか?」

と、唐突に発言した海音に萌音が訝しがる。

「さあね?間違うこともあるって野瀬教授が言ってたから、ゆっくりと見極めることにしたの」

「まさか、俺の他に気になる奴ができたのか?って痛っ・・・!」

あわてふためいた拍子に、足首を捻って痛がる手負いのイケメンが萌音は愛しい。

「嘘だよ。海音しか欲しくない」

萌音の言葉に、海音の顔がパッと綻ぶ。

「萌音・・・!」

抱きつこうとする海音を軽く交わして、

「ほら、仕事仕事!一級建築士様のお手並み、見せてくれるんでしょう?」

萌音は書類の束を持ち上げた。

「おう。やってやるぜ」

笑顔の海音は相変わらず、萌音好みの塩顔イケメンだ。

幸せな時間に萌音は考える・・・。

全ては妄想かもしれない。

思い込みかもしれないだろう。

しかし、本当のことは神様以外は誰も知らないはずだ。

いろいろな不安や悩みを乗り越えた今、萌音はまず、自分がここまで人を好きになれたことに感謝したいと心から思えた。

「運命の片割れではなくても、今私はあなただけが好きです。生まれてきてくれて、同じときを過ごしてくれてありがとう」

萌音の呟きに振り返った海音が破顔する。

「俺も萌音だけを愛してる。死が二人を分かつまでツインソウルはお前だけ・・゛」

誰もいない二人だけの第3会議室で、海音と萌音は書類を抱えたまま長い長いキスをした・・・。

これから先、どんな困難も二人で乗り越えられますように、と誓いながら・・・。



おしまい。

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